Q.5 どのような疾患に対して実施されていますか?
現在、日本で承認され利用可能な治療用放射性医薬品は5種類で、それぞれ下記の疾患の治療に用いられます。
ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル*4
薬効分類名:甲状腺疾患治療薬
対象疾患:甲状腺がん、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
治療の原理:甲状腺細胞がヨウ素を多く取り込む性質を利用し、甲状腺がんまたは転移巣に多く集積してベータ線によりがん細胞にダメージを与えます。甲状腺機能亢進症では、甲状腺が小さくなり効果がでます。
イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液調整用*5
薬効分類名:抗悪性腫瘍剤
対象疾患:低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫やマントル細胞リンパ腫
治療の原理:CD20陽性の再発または難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫やマントル細胞リンパ腫に対して特異的に集積する抗CD20モノクローナル抗体に放射性核種を付けた抗がん剤で、ベータ線によりがん細胞にダメージを与えます。
塩化ラジウム(223Ra)注射液*6
薬効分類名:抗悪性腫瘍剤
対象疾患:骨に転移した去勢抵抗性前立腺がん
治療の原理:塩化ラジウムには骨の成分であるカルシウムと同じように骨に集まりやすい性質があり、注射で体内に送られると代謝が活発になっているがんの骨転移巣に多く運ばれます。そして、そこから放出されるアルファ線が骨に転移したがん細胞の増殖を抑えます。
ルテチウムオキソドトレオチド(177Lu) *7
薬効分類名:ペプチド受容体放射性核種療法剤
対象疾患:ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍
治療の原理:ソマトスタチン受容体サブタイプ1~5(SSTR1~5)のうち主にSSTR2との結合を介して腫瘍細胞に集積し、177Luから放出されるベータ線により、がん細胞の増殖を抑えます。
3-ヨードベンジルグアニジン(131I) *8
薬効分類名:褐色細胞腫・パラガングリオーマ治療薬
対象疾患:MIBG集積陽性の治癒切除不能な褐色細胞腫・パラガングリオーマ
治療の原理:主にノルアドレナリントランスポーターを介した再摂取機構(uptake-1)により腫瘍細胞内に取り込まれ、131Iから放出されるベータ線により、がん細胞の増殖を抑えます。
* 4:1960 年承認
* 5:2008 年承認、(ゼヴァリン®イットリウム(90Y)静注用セット)
* 6:2016 年承認、(ゾーフィゴ® 静注)
* 7:2021年承認、(ルタテラ®静注)
* 8:2021年承認、(ライアットMIBG-I 131静注)
核医学治療は、あなたの病気における治療法の選択肢の一つとして、主治医の先生から提案されます。治療の内容と実施に当たっては、主治医の先生とよく相談してください。
また、核医学治療は医師だけではなく、核医学治療を実施する部門(放射線科、核医学診療科など)の診療放射線技師、薬剤師、看護師などがチームとなって患者さんや家族の方々の支援を行い、治療を進めていきます。